てのひら

久しぶりに会った彼は
裸の私をしっかりと抱きしめ
しばらく何も言わずに髪をなでていた

どんな体位でも
何度も何度も指を絡め直した

いったあとも
しばらく手を離さなかった

帰る彼を見送ったあたしは

ただ

力の抜けた自分のてのひらを
見ていた

電車にゆられて

あなたと会うのは
良くないこと

あなたと会うのは
良くないこと

そう言い聞かせて

しばらく会うのをやめることにした

 

だけど、あなたの後ろ姿が

似ている人が

今電車で

背中合わせに立っている

背の高いあなた

 

この体温が
あなただったらいいのに

ほんとうに
あなただったらいいのに

通勤電車で

つり革につかまりながら

目を閉じたら大粒の涙がこぼれた

夜の窓ぎわ

そこにひざまづいてみてとあなたに言われ
2人とも服は着たまま

背の高いあなたの顔が遠くに見える

カーテンは広く開いていて
部屋の電気は明るくて

あたしの口のなかはじんわりとあたたかく
あたしの体のなかはじんわりとあたたかく

バスタブ

灯りを落として 
入浴剤は入れず

向かい合って座り 
ぬるま湯の中で脚を絡ませ

あなたの片膝に顎をのせ 
あたしはトロンとした上目遣い

「寒くない?」肩をなでるあなたの 
手から滴るしずくの音

2回目までのつかの間は 
こんなにも穏やかで

こんなにも静かで
こんなにもエロチック

ミラー

さっき見ながらバックでしていた

その鏡の前でネクタイを締めるあなた

ピアスをつけるあたし

事後だと世界に知られないよう髪を整えるも

鏡の中で目が会うと、表情はゆるんでしまう